欧州バイオメタン生産 2040年の潜在力132bcmと制度の壁

欧州バイオメタン生産 2040年の潜在力132bcm

欧州バイオガス協会(EBA)が2026年4月、コンサルティング大手Guidehouseに委託した新たな報告書「Biogases: Europe’s overlooked path to energy independence?」を公表しました。

報告書によると、バイオメタン等の生産ポテンシャルは、2040年までに最大132bcmに達すると試算される一方、現在の生産は約22bcm(うちバイオメタン5bcm)にとどまります。

欧州バイオガス協会(EBA):Policy gaps hold back biomethane scale-up despite available potential and geopolitical momentum, report finds

EUはREPowerEU計画で、2030年までにバイオメタン生産を35bcmに拡大する目標を掲げていますが、潜在力と現実の間には大きな隔たりがあり、規制上の障壁が導入を妨げていると分析しています。

欧州がバイオメタンを再評価する背景

欧州がバイオメタンを再評価

同報告書が公表された2026年4月22日は、欧州委員会がエネルギー自立に向けた政策文書「Accelerate EU」を発表した日と重なっています。

EUでは、2025年度のエネルギー輸入に約3,367億ユーロを支出しており、地政学的緊張による追加のコスト負担も重くのしかかります。

こうした化石燃料依存へのリスクを背景に、既存のガス導管をそのまま活用でき、貯蔵や需給調整も可能なバイオメタンが、域内で生産できる再生可能ガスとして注目を集めています。

EUはこれまで、REPowerEU計画で「2030年までにバイオメタン年産量350億m³(35bcm)」を政治目標に掲げてきましたが、現状ではこの目標達成の軌道に乗っていないと評価しています。

2030年は下方修正、2040年は約4倍に拡大

今回の試算によると、欧州(EU27、英国、ノルウェー、スイス)のバイオメタンとe-メタンの生産ポテンシャルは、2030年に34〜35bcm、2040年に116〜132bcm、2050年には181〜205bcmに達すると見込まれます。

注目すべきは、2030年時点の数値が、2024年の前回試算(欧州全体で44bcm)から、約10bcm下方修正された点です。

報告書はこの点について、「潜在力そのものが縮小したわけではなく、これまでの導入加速や原料の調達・動員が、当初の計画に追いついていない実態を反映したもの」と明確に説明しています。

つまり、この下方修正は資源の限界を意味するのではなく、政策の整備と実装のスピード不足を伝える警告であり、制度を整えれば遅れを取り戻す余地があることを示しています。

なお、2030年の試算値34〜35bcmにはe-メタン(0.8〜1.4bcm)が含まれており、嫌気性消化(AD)由来のバイオメタン単体では約33bcmとなります。

年次区分生産量・ポテンシャル(欧州)
2024年実績バイオガス計 約22bcm(うちバイオメタン約5bcm)
2030年ポテンシャル34〜35bcm(バイオメタン単体は約33bcm)
2040年ポテンシャル116〜132bcm
2050年ポテンシャル181〜205bcm

現状は嫌気性消化が中心

EBA統計報告2025によると、2024年の欧州バイオガス・バイオメタン生産量は約22bcmであり、そのうちバイオメタンは5.2bcmにとどまります。

EBA NEWS:15th Statistical Report of the European Biogas Association unveiled: biogases strategic pillar for energy security, competitiveness and sustainability

現状の生産はほぼ嫌気性消化に依存しており、熱分解ガス化やe-メタンが本格的に寄与するのは、2040年以降になると位置づけられています。

バイオメタン施設稼働数などの詳細は、欧州バイオメタンマップ2026をご覧ください。

潜在力を阻む「制度の壁」と原料動員の課題

EBAのHarmen Dekker CEOは、「欧州には拡大に必要な資源があるものの、根強い規制上の障壁が導入を妨げている。安定的で一貫した政策枠組みがなければ、要望されるスピードで拡大できない」と指摘しています。

具体的な規制の障壁として、以下が挙げられます。

  • プラント建設における許認可プロセスの長期化
  • 原産地証明(GO)や持続可能性認証が国ごとに分断され域内取引が困難
  • 支援制度の頻繁な変更がもたらす投資予見性の低さ

こうした課題を研究開発の側から体系化したのが、EBAが別途公表した研究優先領域ペーパー「Bridging the Gaps」です。

また、同報告書が特に重視しているのが原料(フィードストック)の動員です。

2030年時点の主力原料は、農業残渣(25%)、家畜ふん尿(24%)、間作作物(19%)、産業排水(15%)と試算されており、これらで全体の約8割を占めます。

さらに、2040年以降になると限界地や汚染地で栽培された作物、あるいは熱分解ガス化向けの木質バイオマスなどがここに加わる見通しです。

2040年 欧州バイオメタン生産ポテンシャル

2040年に最も高いバイオメタン生産ポテンシャルを持つ国々は次の通りで、限界地の有効活用を牽引役とするスペインが最大となる見込みです。

  • スペイン:約13.2bcm(限界地の活用が牽引)
  • ドイツ:約11.1bcm
  • フランス:約10.8bcm
  • ポーランド:約6.8bcm
  • イタリア:約6.4bcm/英国:約6.1bcm

EBAはバイオメタンの流動性や越境取引を拡大させるため、「バイオメタン・メカニズム」を公開しています。

EBAの要望 欧州各国の政策協調と支援

同報告書は、欧州全体と各国レベルでの政策の整合、許認可手続きの迅速化、そして原料動員の加速を一体となって進めるよう求めています。

EBAは、政策の一貫性と予見可能性を高める枠組みとして「バイオガス三者協定(Biogas Tripartite Agreement)」の実現を訴えています。

また、EBAは産業界11団体と共同で「共同バイオメタン宣言(Joint Biomethane Declaration)」に署名しており、市場拡大と投資を後押しする政策枠組みの整備を要望しています。

あわせて、バイオメタン製造時に副生するバイオCO₂を、e-メタン製造やCCUS(CO₂回収・利用・貯留)に活用する道筋も示しました。

報告書は原料を「すでに存在し回収すべきもの(廃棄物・残渣)」と、「これから栽培するもの(持続可能な作物)」に分類しており、それぞれに最適化された支援策が必要であるとしています。

欧州のバイオガス事業者とって、潜在力と実装のギャップは、原料調達、精製(アップグレーディング)設備、バイオCO₂利用といった、各バリューチェーン段階の事業機会を示すものといえます。

とりわけ、許認可・認証の制度整備が進む局面では、実績のあるアップグレーディング技術や、計測・認証ソリューションへの需要が先行して立ち上がる可能性があります。

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