中国では2026年6月より、全国統一となる生物天然ガス(バイオメタン)価格指数の算出・価格公表プロジェクトが正式に立ち上がりました。
新华财经(中国金融信息网):行业洞察|生物天然气迈入产业化快车道 统一价格指数破解行业痛点
中国国内のバイオメタン生産量は、2030年に200億〜300億m³へと大きく拡大することが見込まれ、本格的な市場化に向けて、公正かつ透明性の高い価格指標の整備を進めます。
この取り組みによって、中国のバイオメタン産業がこれまでの補助金や実証実験の段階から、自律的な価格形成や取引市場整備の段階へと移行することが期待されます。
このプロジェクトは、上海石油天然気交易中心(SHPGX)や、中国沼気学会などの主導で進められます。
中国でバイオメタン価格指数公表が始まる背景
中国のバイオメタン産業は近年、農業廃棄物や畜産排水、食品廃棄物などを原料とする再生可能エネルギーとして急速に拡大しています。
バイオメタンの年間生産量は、国家目標として2030年までに200億m³の達成が掲げられており、その産業規模は1,000億元に達すると見込まれています。
しかし、この急成長の裏で深刻な構造的課題も顕在化していました。取引の大半が1対1の相対交渉のため、地域や用途によって価格が大きくばらつき、共通の価格基準が存在していませんでした。
また、バイオメタン生産に伴う炭素削減価値や、グリーン認証価値が市場価格に反映されず、生産企業が環境投資のコストを回収できないという「価格のミスマッチ」が発生していました。
これらの問題が、中国バイオメタン業界の規模拡大や市場化を阻む障害となっていました。
こうした課題を背景に、2026年6月に上海で開催された「第2回グリーンガスイノベーションフォーラム(绿色燃气创新论坛)」のサイドイベントとして「中国生物天然气价格指数沙龙(中国バイオメタン価格指数サロン)」が開催されました。
バイオメタン産業チェーンに携わる各社参加のもと、価格指数の共同構築が正式に宣言されています。
バイオメタン価格指数とは何か 気証合一取引と市場化の整備

バイオメタン市場化の象徴的な出来事として、2024年8月に中国初となる「気証合一(エネルギー価値と炭素削減証書を一体で取引する方式)」のオンライン取引が成立しました。
绿色燃气核证平台:国家级绿气枢纽打通生物天然气市场化堵点
これは、緑気新能源(Green Gas New Energy)と百事食品(PepsiCo中国)が、1,500万m³のバイオメタンをSHPGX(上海石油天然ガス取引センター)プラットフォーム上で取引したものです。
この取引により、分散していた気源を全国のガスパイプライン網に接続し、炭素削減証書と商品ガスをセットで流通させるモデルを実証しました。
価格指数は、こうした取引のインフラとして機能します。具体的には、以下の5つの役割が期待されています。
- 市場定価ツール:燃料としての基礎価値とグリーン溢価(プレミアム)を分離・可視化する
- 市場透明性の向上:情報の非対称性を解消し、取引効率を高める
- 炭素市場との連携:排出量取引市場との価格連動に向けた基盤を提供する
- 長期投資予測の安定化:プロジェクトファイナンスや設備投資判断の根拠となる
- グリーンファイナンスの促進:グリーンボンドや気候関連融資の参照指標として機能する
航運・工業燃料としての利用拡大と価格基準の不在
バイオメタンは、国際海事機関(IMO)が2023年に採択した「2050年温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ」戦略を背景に、船舶燃料としての需要が世界的に高まっています。
国際海事機関(IMO):2023 IMO Strategy on Reduction of GHG Emissions from Ships
中国でも、LNGや重油に代わる船舶用燃料として採用が検討されていますが、バイオメタンの価格基準がなければ、船会社は従来の燃料との比較コストを試算することすら困難です。
また、工業用途でもデンマークの産業機器大手ダンフォス(Danfoss)の天津・鎮江工場が、2026年にSHPGXプラットフォームを通じてバイオメタンを調達しています。
このように、高付加価値の製造業サプライチェーンへの組み込みも始まっており、製品のカーボンフットプリント削減に活用されています。
2030年中国バイオメタン生産目標と市場規模
SHPGX副総経理の李済軍氏によると、2025年時点の中国バイオメタン年間生産量はすでに20億〜30億m³に達しており、2030年には200億〜300億m³に到達することが業界内で見込まれています。
これは、今後5年間で約10倍の規模に拡大することを意味します。
また、中国政府の公式目標として「2030年までに年間生産量200億m³超」が掲げられており、この定量的な目標が産業全体の投資や政策設計を強力に牽引しています。
なお、バイオメタンを1m³生産するごとに、約2.38kg-CO₂相当の排出削減効果があるとされており、200億m³規模の生産が実現した場合は、年間4,760万トン-CO₂相当の削減ポテンシャルになります。
インフラとしてのバイオメタン価格指数
中国の事例が示しているのは、価格指数の構築が単なる取引インフラではなく、産業の規模拡大や国際競争力を確保するための不可欠なインフラであるという点です。
船舶用燃料需要の拡大や、企業におけるスコープ3排出量の削減ニーズの高まりを考慮すると、バイオメタンの国際的な価格・認証基準の整合は、今後ますます重要な課題となるでしょう。
参考記事:中国の主要バイオガスプラントメーカー・プロバイダー










