農林水産省は2026年6月19日より、令和8年度のバイオマス産業都市構想の提案募集を開始しました。
バイオマス産業都市構想とは、地域のバイオマス原料を、収集・運搬から、製造・利用まで一貫して活用し、産業創出と地域循環型エネルギーの導入を目指す国の制度です。
農林水産省:令和8年度バイオマス産業都市構想の提案を募集します
この構想は、関係7府省の連携によって進められ、すでに107市町村が選定地域となっています。募集の締切は令和8年10月30日17時までとなっています。
バイオマス産業都市構想とは? 7府省連携で107市町村が選定
バイオマス産業都市構想は、内閣府・総務省・文部科学省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省の関係7府省が共同で選定する制度です。
原料の生産から、収集・運搬、製造・利用に至るまで、経済性が確保された一貫システムを構築し、バイオマス産業を軸とした「環境にやさしく災害に強いまち・むらづくり」を目指す地域を国が認定します。
農林水産省:バイオマス産業都市の取組
この制度は、平成24年(2012年)9月に7府省が共同でとりまとめた「バイオマス事業化戦略」を起点としています。
木質、食品廃棄物、下水汚泥、家畜排せつ物といった多様な地域バイオマス資源を、単なる廃棄物として処理するのではなく、産業として循環させる点に特徴があります。
とりわけ経済性の確保が重視されており、事業として自立できる構想が求められます。
選定される地域は制度開始以降、着実に増え続けてきました。直近では令和7年度に3市町が新たに加わり、累計で107市町村となっています。
| 選定年度 | 新規選定 | 累計地域数 |
|---|---|---|
| 令和元年度(2019) | 7市町 | 90 |
| 令和2年度(2020) | 4市町村 | 94 |
| 令和3年度(2021) | 3市町 | 97 |
| 令和4年度(2022) | 4町 | 101 |
| 令和5年度(2023) | 2町 | 103 |
| 令和6年度(2024) | 1市 | 104 |
| 令和7年度(2025) | 3市町 | 107 |
農林水産省:バイオマス産業都市の選定(107地域)
令和8年度募集スケジュールと選定方法
令和8年度の募集スケジュールは以下の通りです。提案を検討している自治体や事業者は、約4か月半の準備期間を念頭に置く必要があります。
- 募集期間:令和8年6月19日(金)〜10月30日(金)17時必着
- 審査・評価:令和8年12月予定(有識者で構成する選定委員会が審査)
- 選定:令和9年1月予定(推薦案をもとに7府省が共同で決定)
提出方法は、募集要領に従って提案書、および参考資料を電子メール等で提出する形式です。
なお、前年度(令和7年度)は郵送等が基本とされていましたが、今年度は電子メール等での提出が明記されており、応募手続きが簡素化されています。
選定地域の支援・メリットとバイオガスの関連
バイオマス産業都市に選定されるメリットは、関係7府省から横断的な支援を受けられる点にあります。
具体的には、各種補助金や交付金の審査における加点評価、制度や規制面に関する相談・助言などが挙げられます。
例えば、農林水産省の「みどりの食料システム戦略推進交付金」では、バイオマスの地産地消対策として、バイオガスプラントのFS調査や設計、施設整備が支援対象となる可能性があります。
バイオガスプラントは、家畜のふん尿や食品廃棄物、下水汚泥などを原料とするメタン発酵設備として、構想の中核事業に位置づけられるケースが多く見られます。
実際に、北海道十勝(JAおとふけ)などの選定地域で、バイオガス事業を展開している事例があります。
参考記事:JAおとふけバイオガスプラント 畜産ふん尿と野菜残渣で地域内の資源循環
資金調達の面では、日本政策金融公庫の農林漁業施設資金や、地域脱炭素投資促進ファンド(グリーンファンド)などの活用が期待されています。
バイオガス事業をGXや脱炭素に活用
バイオマス産業都市は、国のGX(グリーン・トランスフォーメーション)政策や、2050年カーボンニュートラル目標と密接に連動しています。
FITからFIPへの移行が進み、発電単価に依存するだけでは事業採算の確保が難しくなる中で、原料の調達からエネルギーの利用までを地域内で完結する地産地消モデルの価値が高まっています。
注目すべきは、近年の選定地域でバイオガス発電にとどまらず、精製したバイオメタンの都市ガス導管への注入や、液化バイオメタン(LBM)の活用へと展開する動きが出ている点です。
これは、ガス業界が掲げる「2030年度に都市ガス供給量の1%をe-メタンやバイオガスに置き換える」という目標にも関連しています。
参考記事:日本ガス協会「ガスビジョン2050」公表 バイオガスとe-メタンの役割
バイオガス事業者にとって、この制度は単なる補助金獲得の手段ではなく、地域の自治体や農林漁業者、ガス事業者などを巻き込み、脱炭素事業の基盤を構築するための入口となり得ます。






